医療コラム

頻尿と血尿

荒井皮膚科泌尿器科医院

 成人の尿量は1日に約1200ml~1500mlで、尿意を意識するのは200ml~250mlですから尿の回数は普通1日に6~7回となります。それが10数回或は20回以上と回数が異常に増えた場合を頻尿と言います。

 尿量はもちろん発汗と平衡しますから、夏の暑い季節には尿量は減少し、逆に冬寒くて発汗が少なくなり、皮膚血管の収縮がおきますと、腎臓から比重の低い尿が多くでる様になります。この様に季節に順応した生理現象がうまく行われているわけです。

 しかし病的な状態の頻尿、例えば膀胱炎の時には膀胱に細菌の感染をおこし、粘膜の充血が伴ってきて、膀胱内の尿量はわずかでも頻繁な尿意をもよおし、同時に排尿痛を伴ってきます。膀胱炎は検尿によりすぐわかりますから、この様な症状を感じましたら早く診察をうけ、治療すれば、簡単に治す事ができます。

 膀胱から尿道に移行する部分は膀胱頸部と言われますが、この部の粘膜は血管が多く認められます。そして中年以降の女性では、ホルモンのバランス等の関係でこの部の充血がおこりやすく、膀胱炎と同じ様に頻尿を訴える事が多くなります。ただこの場合は排尿痛や尿の病的所見は少なく、排尿後の残尿感或いはすっきりしない気持が続く事が多い様です。

 又、過敏性膀胱と言われるものは、尿の所見もなく排尿痛等の訴えがないにも拘わらず、頻尿を訴える場合です。男女を問いませんが、神経質な方や、女性で腎臓が下垂する遊走腎の症状をもっている方などには多い様です。一般に自律神経系の調節が不調の方々におこりやすいものです。

 この様に尿所見がなくて頻尿のおこる方は結構多いのですが、軽い精神安定剤の服用で案外楽になります。

 この他本当に尿量が増えて頻尿になるものに、糖尿病、尿崩症といった疾患がありますが、この場合はのどの渇きがつよく、水分摂取量が多量となるのが特徴です。

 この様に頻尿の中には実際に尿路の疾患があっておきるものと、自覚的症状の訴えのみの頻尿を認める二つの症状のある事を記憶して頂きたいと思います。

 次に血尿を主症状とする疾患について述べてみたいと思います。血尿を主徴とする病気はいくつかありますが、この中で肉眼ではっきりわかる血尿と、顕微鏡的に多数の赤血球をみとめる微少血尿の二つの形があります。

 この二つの中、肉眼でも出血と判る病気を代表するものは尿路の腫瘍です。尿路は腎臓から外尿道口迄の長い距離がありますが、このどの場所でも腫瘍の発生はみとめられます。そしてこの尿路の腫瘍から認められる血尿の特徴はいわゆる無徴候性血尿といわれます。それは尿路の結石の様に激しい痛みの発作等を伴わず、突然真赤な血尿があらわれ、又一時的に何も治療をしなくても血尿が消失するという特徴があります。そうしている中に数日、10数日間隔に同様の症状が繰返され、次第に血尿の頻度が増してきます。それゆえ肉眼的血尿が現われました時はできるだけ早く専門医で受診され、レントゲン検査、膀胱鏡等の泌尿器科的精密検査をうける事が大切です。

 これらの尿路の腫瘍はやはり高令者の方に多いのですが、勿論絶対的なものではなく、膀胱癌なども若い方にみられる場合も時々あります。

 腎癌は年令に関係なく、若い年代にも認められ悪性度も高く、肺等への転移も伴い易いので早期に発見してもらう事が必要です。

 腫瘍以外で肉眼的血尿をみるものに特発性腎出血という病気があります。これは自覚的訴えはなく、比較的濃い血尿が続くものです。泌尿器科的にレントゲン検査等を行ってもはっきりした所見が得られず、ただ血尿だけが持続するのが特徴です。全身症状は殆どありませんが、血尿が長く続くと貧血を来しますのでこの点御注意下さい。

 若い男性の場合、何の痛みもなくて、朝起きたときに下着に鮮血を認める事があります。この場合は尿道の一番奥の部分、前立腺部と言いますが、この血管に富んだ部分に主としてアレルギー症状などの炎症をおこし充血がおこって出血を認めるものです。

 この様な症状は前立腺炎で認める場合もあり、この時は痛み等の自覚症状を伴ってくる事が多いものです。前立腺炎には勿論抗生物質療法等を必要としますが、後部尿道の充血だけによるものにはアレルギーや出血を抑える様な治療をつづけてゆくと大抵はおさまってまいります。

 この様に肉眼的血尿を主としてのべてきましたがそれ以外に、痛みを主徴とする尿路結石も僅かながらの血尿が認められます。この様な病気は専門医の診断でわかりますので、早く受診され治療を受けられます事が最良と存じます。

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