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誰にでもできる頭痛の診断

東京逓信病院脳神経外科 野口 信


 脳神経外科の外来に来られる方のなかで最も多い訴えは頭痛です。その訴えの中身はさまざまですが、私たち脳神経外科医が本来の対象としている、神経系の外科的治療を必要とする患者さんはほんの一部に過ぎません。大部分の方は病院での治療を必要としないか、内科的治療の対象となる方々です。

 その見分け方はどうすればできるのでしょう。多くの方はCTスキャンやMRIを思い浮かべるかと思います。そのような特殊な診断機器によって正しい診断が下される、という考えは間違いではありませんが、それ以上に役に立つのは、患者さんから聞き取る頭痛に関する情報です。

 患者さんの年齢、性、職業に始まって、頭痛はいつ起こるのか?持続時間は?痛みの場所は?痛みの性質は?何か他の症状を伴うのか?きっかけになることは何か?痛みの前兆は?頭痛によってどれほど生活に支障があるのか?ご両親、ご兄弟にも頭痛はあるのか?お酒、タバコ、くすりは常用しているか?何か運動をしているか?仕事や家庭でのストレスはどうか?など、しつこくお尋ねします。そうしているうちに患者さんの頭痛の原因は絞り込まれます。その上で簡単な神経学的検査を行い、その結果、生活指導のようなお話だけで帰っていただくか、すぐにCTスキャンを行うか、薬を処方するかを決めることができます。

 ただ実際には話を聞くだけでお帰りになる方は少数で「それでも心配だからCT(MRI)を」とおっしゃる方が大半です。われわれとしても脳の疾患はないだろう、と考えていても、万が一ということもありますので、そのような場合にはすぐに検査をすることになります。このときの気持ちは何か見つかるだろう、というものではなく、何もないことを確認しよう、というつもりです。そして何も異常がないことが目に見えるかたちで確認されると、患者さんもようやくほっとしてお帰りになる、というパターンが多いのです。

 今回は、先ほど書いたような、患者さんからの情報でどれだけ頭痛の原因が分かるか、という点について記述しようと思います。ここに書かれたことを参考にすれば、すぐに病院に飛んでいくべきか、薬で治るのか、温泉にでも行った方が良いのか、など判断できることと思います。

くも膜下出血

 もっとも強い頭痛で、もっとも死亡率の高い頭痛はくも膜下出血です。これこそ最悪、最強の頭痛です。頭をハンマーで殴られたようなとか、頭が割れるような、などさまざまな表現で語られますが、誰にとっても人生最初で最大の頭痛であることは共通しています。また、頭痛の始まりの時間が特定できるのも特徴です。例えば、台所で仕事中お皿を取ろうとした時とか、テレビで何かの番組が始まった時など正確に示すことができます。くも膜下出血は頭蓋骨の中で脳動脈瘤が破裂して起こるものです。したがって破裂するまでは無症状ですが、破裂すると動脈性に大出血を起こします。このため突然激しい頭痛に襲われるわけです。同時に吐き気を催し、殆どすべての方が嘔吐します。また、意識を失うこともしばしばあります。このように強い頭痛、嘔吐、意識障害があった場合には患者さんはまず間違いなく救急車で来院されます。

 しかし、中には例外的に頭痛が軽い場合もあります。出血が軽くすんだ場合で、歩いて外来に来られることもあります。しかし、その場合でもいつもと違う強い痛みが突然起こったという特徴は持っています。だんだん痛くなってきた、とかいつ始まったか分からない、という場合はくも膜下出血ではないだろうといえます。

 くも膜下出血は放置した場合再出血を繰り返し、死亡することが殆どです。直ちに脳神経外科に入院し、治療を受けなくてはなりません。日本では年間14,000人以上の方がくも膜下出血で亡くなられています。したがってくも膜下出血を起こす方の数は3万人ほどと推定されます。まったく他人事、とはいえない数字だと思いませんか?

脳腫瘍

 頭痛がすると、脳腫瘍では?と考えるのは分からないでもありません。しかし脳腫瘍は比較的珍しい病気です。その頭痛のパターンはいろいろですが、特徴的なことが二つあります。一つは進行性であることと、もう一つは神経症状を伴う、ということです。

 頭痛は朝起きることが多く、日がたつにつれて、だんだんひどくなってきます。これは腫瘍が徐々に大きくなってくるためです。何年も続いている頭痛ではなく、最近1〜2ヶ月のあいだにひどくなってきた、という経過をたどります。頭を動かしたり、運動したりすると痛みが増します。

 また脳腫瘍では最初から頭痛があることはむしろ珍しく、手足の麻痺や、痙攣、言語障害、痴呆、目の障害などの神経症状から始まることが多くみられます。

 脳腫瘍が大きくなると頭の中の圧が高まってくるので、嘔吐もするようになります。特に小児の場合は頭痛より嘔吐が目立つことが多いです。

 脳腫瘍は自然治療ののぞめない疾患です。やはり脳神経外科で手術を受けなくてはなりません。ただ脳腫瘍の半分は良性腫瘍であり、完全治癒が期待できます。

その他の脳神経外科的疾患

 「慢性硬膜下血腫」は外傷後2〜4週間くらいたって、脳を包む硬膜の下に血液がたまってくる疾患です。高齢、男性、大酒飲みの人に多く見られます。外傷は憶えていないか、本当にない場合もあります。血液がたまって脳を圧迫するため頭痛がするのですが、半身麻痺や痴呆の症状を伴うことがしばしばあります。そういう点は脳腫瘍とも似ています。この病気は手術で完全に回復します。「治る痴呆」としても有名な疾患です。

 「脳膿瘍」は脳の中に膿(うみ)がたまる疾患です。脳腫瘍と症状、CTスキャンの所見が似ています。脳膿瘍の場合は体のどこかに炎症を起こしていたり、心臓に先天的な疾患があったりすることが多く、鑑別の手がかりになります。これも脳外科で治療が必要な疾患です。

 以上、頭痛に関して自分の専門領域の病気について書いてきましたが、実際にはこのような疾患はめったにあるものではなく、これから述べるいわゆる機能的頭痛(慢性頭痛)が頭痛の原因の大半を占めています。これらの頭痛ではCTやMRIでは異常は認められません。

緊張型頭痛

 これは最も多く見られる頭痛です。頭が重い感じがする、締め付けられるように痛い、後頭部や首筋がいたい、という症状が典型的です。患者さんは大体頭に何かかぶっているようだ、とかいつも押されているようだ、というような表現をされることが多いようです。症状がそれほど強くないことも特徴であり、日常生活にはふつう差し支えありません。しかしすっきりすることもなく、つらい日々が続きます。

 この頭痛は慢性的な痛みであるため、いつ始まったかはっきりせず、ほぼ毎日のように続きます。仕事とも関係があるようで、デスクワークの人に多く見られます。また毎日コンピュータに向かっているという方にもよく起こります。日本では緊張型頭痛に悩む方は2,000万人以上いるといわれています。

 その原因は、頭を支える筋肉や、頭、顔を動かす筋肉が緊張し、締め付けられて痛くなるのです。脳の重さは1,200グラムくらいですが、頭全体の重さはそれに頭蓋骨や筋肉が加わり4キロくらいになります。その頭が前後左右斜めに動くためにたくさんの筋肉が必要です。居眠りすると頭がガクッと落ちますが、これは普通の生活では頭を無意識のうちに持ち上げている、ということです。持ち上げるのは後頭部から首、肩につながる筋肉の働きであり、これらの筋肉は人が起きているあいだは常に収縮しているのです。しかし同じように起きて仕事をしていても頭痛の起こる人と起こらない人がいます。これには姿勢が関係しているといわれています。姿勢が悪いと首の筋肉への負担が多くなり筋肉の緊張が高まり頭痛となるのです。悪い姿勢とはうつむいた猫背の形です。胸を張り頭を高く保ちましょう。パソコンに一日向かっているのはこのような緊張型頭痛を起こすための準備をしているようなものです。30分に一度は伸びをするとか、首を回すとかして、筋肉の緊張をやわらげてください。また精神的ストレスも関係があります。ストレスで筋肉が緊張するだけでなく、姿勢もうつむきがちになります。

 このように原因を考えると、治療もおのずから分かってきます。薬を飲んで痛みをとるのは最後の手段です。筋肉の緊張をほぐすような運動、またそれ以前に気持ちをリラックスさせることが重要です。旅行による気分転換なども有効です。また日頃から運動をして、体を鍛え首の筋肉も丈夫にしておくことは役立ちます。

片頭痛

 片頭痛は緊張型頭痛の次に多く見られるものです。単なる頭痛のことを片頭痛という方がよくいらっしゃいますが、片頭痛ははっきりした特徴のある頭痛で、医学用語です。

 痛みの特徴はズキンズキンと脈打つように痛く、吐き気、嘔吐などを伴うことがしばしばあります。痛みのないときはぜんぜん痛くありませんが、片頭痛が起こると数時間から3日間くらい続くことが多いです。痛みの場所は片側のこめかみや、前頭部が多いですが、両側にまたがることも珍しくありません。アルコールを飲んだり運動したりすると痛みがひどくなります。またチョコレート、ワイン、チーズなどの食品がきっかけで痛くなることがあります。

 前兆として目の前にキラキラしたものや、ギザギザのものが見えることがあり、このようなタイプを古典的片頭痛といいます。片頭痛は若い人(20歳〜40歳代)に多く、また女性に多いのが特徴で、痛みの程度は緊張型頭痛より強く、仕事を休むとか、家事ができない、というように生活に支障があるのが特徴です。

 片頭痛がなぜ起こるか、はかなり分かってきていますが、完全に解明されたわけではありません。分かっているのはセロトニンという神経伝達物質が関与していること、セロトニンによって収縮した血管が、その反動で拡張するときに痛みが起こる、ということです。セロトニンの働きを薬で抑える、という治療法が、最近では行われるようになりました。このような薬はトリプタン系といわれ、最近になって日本で使われるようになりました。だいぶ前に病院にいって片頭痛の薬をもらったけどよくならなかった、という方はもう一度病院にいって新しい薬をもらってみることをお勧めします。

その他の頭痛

 機能性頭痛は以上の二つが代表的なものですが、どちらの要素も持つ混合型頭痛といわれるものも多く見られます。その場合にはやはり緊張型頭痛に対する治療を優先し、必要に応じて薬も服用するのがよいと思われます。

 頭痛はあくまで自覚症状であり医者が決めた分類に当てはまらないことは多くあります。そのときにはなぜ痛いのか、を考えてみてください。痛みという感覚は生きていくうえに必要不可欠なものです。ナイフで指を切ったときに、もし痛みを感じなかったら大変です。

 痛みは危険を回避するために備わった警告のための感覚です。頭痛も例外ではありません。深刻な疾患の場合もありますが、そうではなくても、今のままの生活ではいけないよ、という警告が送られてきていると考えられます。運動不足、ストレスだらけの生活、仕事上の無理、精神的な悩み、など何か思い当たることがありませんか?そのような原因があればそれを解消することが本当の治療になるのです。

出典:千代田区保険年金課 

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