医療コラム

寒い季節から春にかけての皮膚疾患

荒井皮膚科泌尿器科医院

 皮膚は体の全表面を覆い、内臓を保護する大切な器官です。その上汗を分泌する事により体温を調節し、僅かながらも皮膚呼吸作用、吸収作用等の生理機能を有しています。皮膚も色々の疾患が認められますが、特に皮膚病は年令、気候、風土等に左右される事の多いのが特徴です。

 皮膚疾患の中でなんといっても多く見られるのは湿疹系の痒みが主となる病気です。湿疹系の病気の中には生まれつき、アレルギー体質をもっておきてくるアトピー性皮膚炎を代表として、その他に乳幼児湿疹、主婦湿疹、乾燥型湿疹等の種々の形としてあらわれてきます。

乳幼児湿疹は気候の影響をうけることは少ないのですが、やはり冬の時期には多くみられる様です。10月から4月頃までの季節になりますと、湿度が乾燥してきます。

 人の皮膚は皮脂層があって外からの刺激を防ぐ様にしていますが、中年頃を境として 皮脂の分泌が少なくなってきます。皮脂層は皮膚に必要な皮脂と水分を含み、外から例 えば洗剤類等を使用した場合でも奥の部分に刺激が及ばない様な防御機構を具えており ますが、持続的に水を使う事の多い仕事にたづさわったり、乾いた冷たい空気等が加わりますと、この予防する皮脂と水分が減り、その部分に湿疹状態ができてきます。主婦や食品関係で水を使う事の多い人々はこの様な形の湿疹があらわれてきます。症状は痒みの強い赤い斑点、小水泡、亀裂等が特徴です。冬乾いた冷い風が下肢、腰部等の皮膚に加わりますと、皮膚は乾燥し、ふけのような落屑と激しい痒みを伴った湿疹症状をおこしてきます。

 アトピーの方も同じ様に皮膚乾燥状態が強いので皮膚はカサカサとなり、又痒みのために掻きこわした表皮がはがれてび爛(ただれ)の症状を作る事もあります。

 それではこういう病気の方々はどういう処置をとったらよいのでしょうか。まず予防する皮脂が減りますので、皮脂を洗い流す様な洗剤類をできるだけ使う事を少くする事が必要です。それには水仕事の時、素手で仕事をしないで、保護する手袋を使うと効果があります。然しゴム手袋をじかにしますと、ゴムそのものでかぶれる事がありますので、下に綿の薄い手袋をして、ゴムが直接肌にふれない様にして下さい。綿の手袋は外用薬を湿布したときも常に使用すると皮膚の保護となり、又通気性もありますから手が湿っぽくなる事もありません。

 湿疹は就寝して身体が温まってきたときや、日中の仕事が終って自宅に帰り、緊張がほぐれた時などに激しい痒みを覚えます。そのため湿疹の治療には先ず出来るだけ外的な刺激をうけない様にするのと同時に、食事も香辛料、アルコール類を少くする事も肝要です。又湿疹のできた場所には外用薬として、ワセリン等の油脂成分を主剤とした軟膏類を塗って皮膚の保護を行います。

 症状が重いときはやはり専門医に受診されて、副腎皮脂ホルモン含有の軟膏を使って 早く治される事も必要です。入浴は差支えありませんが、石鹸は手で軽く溶かして肌に 塗り洗い流す程度とし、タオル等で肌を強くこする等の事はさける事が必要と思われます。

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